武家の女性の衣裳として用いられた打掛姿の、打掛、掛け下着、帯、小物に至るまで、そのすべてを白で揃えたのが日本の花嫁衣裳である「白無垢」です。
白は最も格が高く、儀式に臨むのにふさわしいとされた色で、花嫁衣裳として着用した後は、喪服として着たといいます。
(明治期に西洋の習慣に倣って黒が第一礼装と定められるまでは、喪服も白一色でした。)
打掛は武家の女性の服装であり、懐剣を携えることは自分の身を守るための武家の女性のたしなみですから、結婚そのものとは関係がないのですが、夫の家の一員となり、万一の際には死も辞さないという、嫁ぐ決意を表したのが白無垢の意味だともいわれます。
武家の女性たちが他家との結婚で果たした役割や決意から、白無垢や懐剣が「死ぬ覚悟の証」ということにつながったのかもしれません。
頭には「綿帽子」や「角隠し」を着用しますが、綿帽子は白無垢にのみ着用します。
どちらも本来は塵除けのためのもので、室内では外していましたが、現代では挙式の間は被ったままでいることが一般的になりました。
披露宴ではこれを外して、美しく結い上げた文金高島田や簪が見えるようにします。