おもてなしの才覚

NHKの朝ドラ『ごちそうさん』を欠かさず見ていまして、
毎朝、毎週、美味しそうな料理に心で舌鼓を打っています。

先週の『ごちそうさん』は西門家の結婚式のストーリー。

ネタバレ注意!これから見る方は見終えてから読んでください!!

義妹・希子の祝言の料理を任されため以子。
西門家のしきたりを踏まえ、そういったことにうるさかった義姉・和枝のようにきちんと準備したいと考えていました。
本家が造り酒屋だったという西門家では、焼き物のお魚は粕漬けを出すのだと、義父・正蔵に教わります。
その魚について、正蔵はこう言うのです。

「魚に何を選ぶかによって御寮人(ごりょん)さんの才覚が問われるっちゅうこっちゃ。
趣味がええかなぁ、機転は聞くのかいなぁいうんが試されるんや。」

戦前は自宅で祝言を行うのが一般的。
料理をはじめとするもてなしには、その家のしきたり、そして台所を取り仕切るその家の女性のセンスが反映されたわけですね。

最後まで魚で悩んでいため以子。
正蔵はこう助言します。

「味の問題だけやないと思うがなぁ。
祝言言うのはなぁ、ふたりの新しい旅立ちを祝福することと、
これから親戚づきあいになりますんでよろしゅう、という、そういう席や。
その席でめ以子さんが、何を伝えたいのか、それが大事や。」

最終的に、嫁ぐ希子へのメッセージを込めた魚を用意しため以子。
どんでん返しもあり、幸せな宴席となりました、とさ。

西門家の婚礼料理は、こちらのページに詳しく紹介されていますよ。

NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』
「WEB取材班が行く」第九回
http://www1.nhk.or.jp/gochisosan/special/webspecial09.html

そもそもハレの料理というのは、意味を大切にして作られているのですよね。
和食に脈々と受け継がれた、日本らしい精神性。
おせち料理をはじめとする、ハレの料理には、お客さまをもてなす想いと祈りが込められています。

現代は、おもてなしの部分をいわば”外注”しているわけですが、
既に誂えられたメニューに、自分たちらしい意味を持たせた料理をプラスするのはどうでしょう?
食材でも形でもいい、ふたりのメッセージを込めてみる。
しきたりというスタイルに則ってもいいでしょうし、ふたりだけの形を新たに考えてもいいと思います。

『ごちそうさん』の料理指導をされている広里さんが参考になさった本『日本料理 祝儀 不祝儀ハンドブック』。
こちらの著者の長島さんは私のお客さまのお知り合いで、そのご婚礼のお料理を担当されたので、間近で拝見する機会がありました。
上の写真は、そのご婚礼で出されたお料理です。

私もそのご縁でこの本を知り、仕事でもいつも参考にさせていただいています。
形を大切にする日本のハレ、しきたりに込められた意味も含めてわかりやすくまとめられています。
ご興味があればぜひ読んでみてください。


『日本料理 祝儀 不祝儀ハンドブック』
長島 博 著

NHKの朝ドラや大河ドラマは、人生を扱うドラマなので、必ずと言っていいほどどの作品にも祝言のシーンが出てきます。
でも、ここまでその中身に詳しく触れたものは珍しいですね。
どのドラマも興味津々で見ていたので、『ごちそうさん』のこのストーリーは本当に嬉しい内容でした。